院長コラム

(20)「訪問診療の卒業」〜(2018年12月10日)

当院のモットーは暮らしを支えることであり、暮らしの延長線上でお看取りまで対応することもある。
一方で自宅に戻ってから全身状態が改善する方々もいる。退院直後はかなり衰弱していたが、今では一人で外出までできるようになったじいちゃん。外来通院再開に向けて、訪問診療が卒業となる嬉しい準備段階。
寒空の中で開く花に、命のエネルギーを感じる。

(19)「100歳を目前に…」〜(2018年11月22日)

お看取りに慣れてはいけないと思っている。病状を説明してご家族に心の準備をしていただくのには、結構心身のエネルギーを費やす。
100歳の誕生日を目前にしたばあちゃんを、いまお看取りしてきた。今日の日中、もう血圧は測れなくなっていたけど、アイスクリームを舐めてくれた。ご家族ご親族が見守る中で、穏やかな旅立ちだった。
あおぞら富谷仙台で、99人目となる死亡診断書を記載した。

(18)「宮城ALS医療連携講演会」で講演させていただきました〜(2018年10月24日)

教育講演にお招きいただき、「ALS在宅診療11例の栄養管理」と題して発表させていただきました。いつもお世話になっている東北大学神経内科の諸先生方の前で緊張しましたが、当院で診療したALS11例の経過と栄養管理上の問題点に加え、終末期の栄養管理やご家族への説明等も盛り込んだ内容としました。
特別講演では、「ALSにおける栄養障害とその対策 -UPDATE- 」について、東京都立神経病院の清水俊夫先生より貴重な最新の知見を分かりやすく学ぶことができました。

(17)「宮城音楽療法研究会」で講演させていただきました〜(2018年6月24日)

お招きいただき、「在宅療養支援診療所における音楽療法の試み」と「ALSにおける呼吸リハビリと音楽療法プログラム(2010年、宮城病院勤務時代に作成したもの)」について講演させていただきました。
音楽による精神的効果はもちろんのこと、音楽を用いながら身体にもいいことができたらいいよね、という日々の挑戦は始まったばかりです。音楽療法は嚥下や呼吸、失語の機能訓練にも大きな可能性を秘めていると感じます。

(16)「not doing, but being」 〜 (2018年1月27日)

not doing, but being
特別なことはしなくていいんです。
小中学生のお子さんが、体力の低下しているママにどう接していいか戸惑いますよね。
そばにいて手を握ってあげたり、近くにいて気配を感じるだけでも、お互いにとってとても貴重なことです。
ママに残された時間は極めて限定的です。
って、今の往診で説明して帰宅した。あー、切ない...

(15)「お看取り」 〜 (2018年1月10日)

これまでに当院でお看取りした60人の方々のデータをまとめました。

・居宅44人、施設16人(9ヶ所の施設)
・年齢:90歳以上20人、70〜89歳34人、69歳以下6人
・死因:老衰等31人、末期癌22人、特定疾患7人
・診療期間:1ヶ月以内21人、2〜5ヶ月23人、6ヶ月以上16人

お一人おひとりの歴史に敬意を払い、最上級に丁寧な字で死亡診断書を記載します。

(14)「一番の困りごと」 〜 (2017年12月16日)

「いま一番お困りなこと、心配なことは何ですか?」
医療者から見て問題だと感じることと、実際にご本人ご家族が困っていることは、しばしば異なります。
末期癌にしても神経難病にしても、現在の困りごとに対応しながら、半月後、1ヶ月後、2ヶ月後の病状悪化を見越して説明と対策を講じる。
シビアな状態に向き合いつつも、その中で少しでも穏やかにいい状態で長く過ごしていただけるよう、一緒に考えていくことを約束する。
そうして、普通に笑顔も笑いも出る、当院の診療風景。

(13)「コミュニケーションと音楽療法」 〜 (2017年11月29日)

伝えたいことを伝えるための手段が障害されるのは、大変苦しいことです。
Aさんは人工呼吸器を装着していて、わずかに動く左手で障害者用のパソコンを駆使し意思表示してくれます。
Bさんは気管切開をしてから声を失っていましたが、言語聴覚士さんと連携してスピーチカニューレに変更し、現在発声の練習中です。
Cさんは脳卒中後の失語のため言いたいことをうまく言葉にできずに、いつももどかしさと諦めの混じった表情をしていました。
今回音楽療法士さんとご縁をいただいたので、音楽を用いて彼のコミュニケーション意欲を大事にしながらリハビリを進めていけるといいな。M先生、よろしくお願いいたします!

(12)「私のライフワーク」 〜 (2017年10月24日)

年を取って最期を迎える場合でも、癌などの病気で人生半ばで最期を迎える場合でも、最後までその人が社会の中で役割を持ちながら、生き生きと暮らせたらいいと思うし、そのための仕事を私のライフワークにしようと決意した。
それが高校2年の夏だったから、もう24年が経つんだなぁ...

(11)「女性医師と訪問診療」 〜 (2017年10月9日)

「女医だから」と一括りにするつもりはないが、訪問診療でご家庭にお邪魔する時に、やはり女医は有利だと思う。
お家の方と仲良くなれるし、ケアマネさんや訪看さんたちとも話しやすい。
今まで自分がやってきた、育児や民生委員の経験も役立っていると感じる。
若い女性医師の皆様へ。育児中の勤務で悩むこともあると思いますが、非常勤でも医者業は続けておくといいですよ。全ての経験が糧になります。

(10)「覚悟を決める」こと 〜 (2017年8月24日)

診療の場面では、時々患者さんやご家族に覚悟を決めてもらう必要が生じます。
私も状態の悪い患者さんの24時間主治医を引き受ける時点で相応の覚悟を決めますし、言いづらいことを伝えなきゃいけない場面では、逃げずにきちんと向き合う覚悟をもって臨みます。
それが、暮らしを支える在宅主治医だから。

(9)「富谷仙台が、2つのベルに持たせた意味」 〜 (2017年8月6日)

富谷仙台では、法人のロゴである2つのベルに「ご本人の想い」と「ご家族の想い」を重ねました。
両者の想いがほぼ同じ場合もありますが、全く別の方向を向いていることも時にあります。
両者の想いを聴きながら、医学的に現状と今後の想定される変化をお伝えし、利用できる社会福祉制度を説明する。
そうして、いかにご本人とご家族の生活を両方成り立たせていけるか、どこで折り合いをつけて、ハーモニー(不協和音でなく)を響かせられるか、当院職員とケアマネ、訪看等々の多職種で連携しながら日々取り組んでいます。

(8)「多職種連携」 〜 (2017年7月6日)

当院のモットーの1つは、多職種連携です。
在宅療養では多くの場合、1人の患者さんに対し、訪問看護師さん、ケアマネさん、薬剤師さん、訪問入浴の方々やヘルパーさん等、複数の事業所の多くの方々が関わる。
入退院を繰り返す方では、病院の連携室とも密にやり取りをする。
当院は開業してまもなく1年半になるので、顔なじみの関係もだいぶできてきた。
事業所の垣根を越えて、積極的に連絡を取り情報共有をしながらお互いが円滑に業務を遂行できるよう、そしてチームの力が最大限に発揮され、患者さんと家族に最大の利益があるよう、今日もあちこちに電話をしたし、あちこちから連絡もいただいた。うん、いい感じだ。

(7)「お花の撮影」 〜 (2017年5月15日)

往診先のお宅で咲いているお花を撮り始めて1年が過ぎ、早いお宅では2シーズン目のお花に会えるようになりました。
このお宅の薔薇は、昨年撮らせてもらった時に、亡きお母さんが40年以上前から育て咲かせていたものだというエピソードを聞いていたので、「今年もお母さんの薔薇の季節になりましたね♪」

(6)「民生委員と見守り活動」 〜 (2017年5月6日)

超高齢者のみの世帯で、いかに暮らしの安全を確保していくか、異変が起きた際に、いかに周囲がそれを早く察知できるかは、私が民生委員を務めていた頃からの課題です。
例えば90歳で認知症、独居のじいちゃん。ストーブの時期は無事に乗り切れたが、ガスの空だきの心配はつきまとう。ガス漏れ警報器が作動しても、適切に対処できないだろうな。
じいちゃんが急死した際、果たして何日後に気づいてあげられるだろうか?
また、認知症のじいちゃんを介護している、90台のばあちゃんもいる。
夜中に何度もトイレ介助してる。2人で転んだら、起き上がれないだろうな。
ばあちゃんに急変が起きても、じいちゃんはSOSを発信できない。さて...
民生委員や隣近所と連携すると言っても、民生委員だって家庭もあれば仕事もある。
毎日安否確認のため回っていられない。最近のオートロックマンションでは、本人に会いに行くこと自体困難なようだ。
折しも民生委員制度100年らしい。民生委員経験のある在宅医として、いかに暮らしを見守り支えていくか、個人情報保護の枠の中で、いかに関係機関と連携していけるか、挑戦の日々です。

(5)「全体をうまく成り立たせること」 〜 (2017年3月4日)

個別への配慮をしながら、いかに全体をうまく成り立たせるか、は当院の挑戦でもあります。
例えば認知症のために表情険しく、暴言暴力の著しいばあちゃん。当然介護者は毎日の対応に疲弊します。
グループホームなどの集団生活の場では、1人の不穏が他の入居者にも波及して皆で落ち着かなくなるため、プロの介護士といえども慢性疲労から笑顔が曇ることがよくあります。
安定剤をうまく調節できると、ご本人の表情が改善して不適切な言動がなくなり、本来のその人らしさを取り戻すことができます。
「おかげさまで落ち着きました」と介護士にも安堵感の笑顔が戻ると、私も嬉しい(^-^)

(4)「ご自宅では、生活者」 〜 (2017年2月26日)

外来を受診する人や入院している人は、自動的に「患者さん」と呼ばれますが、私たちは訪問診療の対象者を患者さんとは呼ばないようにしています。
常に「患者」モードで生活しているわけではないので。
「生活者」として、〇〇さん、と接します。
入院中には不穏がひどくて、安全確保のためにつなぎ服を着て抑制帯までつけられていたじいちゃん、ばあちゃんたちも、自宅に戻ると案外表情良くパリッとなります。
胃瘻や鼻管を自己抜去しないように身体抑制されていた方々も、ご家族とご相談の上で外してみます。
まあ抜かれたら入れに来ますからと説明し。入院中には何度も自己抜去した方でも、自宅に戻ってからは意外に大丈夫でこちらが驚くくらい。やっぱりお家はいいね。

(3)「当院のこだわり」 〜 (2017年2月19日)

【当院のこだわり1】「地域での暮らしを応援する」
病気や障害等により不自由さを抱える方々が、社会や家庭の中で役割を持ちながら生き生きと暮らせるように、医療の側面からお支えしたいと思っています。

【当院のこだわり2】「全体がうまく成り立つように」
●学生時代に、病気だけを診るのでなく、病気を持った患者さんの生活全体を診る重要性を学び、
●癌の緩和ケアを通して、患者さんだけでなく、ご家族の心身にも配慮する精神を学び、
●ALSの療養支援を通して、患者さんとご家族のみならず、訪問看護師やヘルパーなどケアに関わる地域のスタッフが皆、笑顔で継続できる体制づくりが不可欠であることを学びました。

かくして当院では、@患者さんはもちろんのこと、Aご家族も、B地域のスタッフも、そしてC当院の職員も、その一人ひとりを大切にして全体がうまく成り立つよう、日々取り組んでいます。

(2)「お看取りとお線香訪問」 〜 (2017年1月21日)

当院では開業以来の1年で、24名の方々をお看取りいたしました。
そしてお看取り後1ヶ月を目途に、ご自宅にお線香をあげに伺っています。
ご本人への供養のため、ご家族のお話をうかがうため、また私自身の区切りのため。
初診時(ご紹介いただいた時)からかなり状態が悪く、数日以内のお看取りになる方々もいらっしゃいます。
苦痛症状の緩和を図りながら、ご本人が今までお好きだったことやお仕事の話はうかがうようにしています。
いよいよお看取りでかけつけると、集まっているご家族ご親族の皆様は一様に硬い表情をしていますが、「今まで(診療中に)こんなことがありましたよね。〇〇がお好きだったと伺っておりました」等の話をすると、一斉に場が和み、いろいろな思い出話が出てきます。
お線香をあげに伺った時、「お父さんをあのように送ってあげられてよかったです。次は私の時もお願いします」と奥様からご予約(?)をいただくこともあります。
深い悲しみと喪失感の中で、当院のやり方でよかったとお話をいただけると私自身も救われます。

(1)「QOL」 〜 (2016年7月22日)

quality of life (QOL) には様々な訳し方がありますが、私の好きな訳は「命の輝き」というものです。
久しぶりに自宅退院し、キラキラの笑顔を見せてくれた彼女の表情は、入院中にお会いした時とはまるで違っていました。
彼女とご家族の笑顔の輝きに触れ、そんな想いを新たにした本日のお看取りでした。

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